損失への姿勢にその人の器と人間性が現れる

こんにちは!肥後庵の黒坂です。
その人の人間性や器の大きさは、普段仮面の奥底に隠されています。世の中には色んな人がいるので、もしかしたらその人の顔を見るだけで分かってしまう、オーラで伝わってしまうという特殊な能力を持った人もいるかもしれません。私はあいにく、そのような特殊能力を持ち合わせてはいませんので、損失への姿勢で推し量るようにしています。損失に対峙した時、人は隠していた本性を現すものです。それはいい意味でも悪い意味でも。
得では現れない本音が損失を被ると隠しきれなくなる
人は得より損に強く反応する特性を持っています。
コイン投げをして表が出たら掛け金の2倍を、裏が出たら0になるというゲームを考えてみましょう。確率は五分五分、これで1万円をかけてみませんか?と声をかけてOKする人はほとんどいません。あなたもそのように声をかけられて「よっしゃ!確率はフェアに五分五分なのでやってみよう」とは考えないと思います。おかしいですよね?なんでかけないんでしょうか?それは失う損失に強く反応している何よりの証拠です。投資の世界ではこれが顕著に現れてしまいます。投資では9割が損をすると言います。なぜかというと、損失に強く反応してしまい、正しい投資判断が出来ていないからです。多くの投資家は早すぎる段階で利益を確定させ、その逆に損失は大きくなってからようやく確定させてしまいます。勝つにはこの逆をやればいいわけですが、人間心理を超えられる人が投資家の1割しかいないというわけです。
そして人はオトクなものに対しては我慢ができます。最近の好例で言えば仮想通貨です。仮想通貨はうまくやって稼いでいる人がいる一方で、ほとんどの人は手を出していません。なぜかというと「損失を出す話を聞いて怖くなった」「なんか怪しい」というネガティブな印象を持っているからです。そうした人たちは「儲かるかもしれないけど、絶対に損はしたくない」という気持ちが強すぎて、手を出さないのです。得なことは我慢して現状維持でもいいと考える人が多く、そうした人たちは損失を出してしまうことには絶対に我慢できないと考えるものです。そうしたときにその人が普段は見せない本性が現れるものです。
損失に対峙してキレる人たち
私は色んな人と一緒に働いてきました。面接をしたり、初対面の頃はおとなしくていい人そうに見えていても、その後に思わぬ困難に立たされたことで思いもよらない人間性を目の当たりにすることを何度も経験しましたね。
以前に東京で会社員をしていた頃、同じオフィスで働いていた人に、某米国大手のソフトウェア会社で長年働いていたエリート社員がやってきました。英語もITスキルも堪能、面接ではハキハキと明るく受け答えをしてとても強い仕事への意欲を感じて即採用となりました。最初の頃、彼女とはうまく仕事ができていました。しかし、仕事が佳境に入り上司もピリピリした空気を醸し出す段階で突然恐ろしい本性を現しました。それまではテキパキと仕事をして、ハキハキとコミュニケーションを取っていた彼女が突然ブチ切れたのです。「この会社の体制はおかしい!」と言い放ち、自分は権利に守られるべき対象であり、現状の体制が断固不服であるといい出したのです。慌てた上司が話しを聞いてみると、5分残業した時間が残業代に入っていなかったとか、人前で叱られることが屈辱的だというのです。確かに問題がまったくなかったか?というと改善点はあったのかもしれません。しかし、普通に不満点を言ってもらえれば会社としても改善して、お互いに納得の行く関係を維持できたことでしょう。その話し合う機会をすっ飛ばして、突然切れたので周囲や私はとても驚きました。彼女の物言いは「労務契約を結んでいる自分は、法律に守られている」と強い主張をして、人事や労基に駆け込んでパワハラだ、労働者の権利を軽く見ていると訴えて結局退社しました。自分に少しでも不利益を被ることが我慢ならなかったのでしょう。去り際、彼女と話をしたのですが「仕事内容はとてもおもしろくてあっていただけにこんな結果になって残念」といっていました。私が逆の立場であれば、仕事が面白いなら5分残業代がつかなくても辞めてしまうことはなかったと思います。
このような極端な例の他にも損失にキレる人たちはたくさんいます。例えば後任者や部下に仕事を振って自分の思うようにいかない、という例などです。仕事になれないうちはどうしても失敗がつきものです。そこでガミガミ怒るのではなく、どうすれば次は防止できるか?という事にフォーカスすることでその人の仕事の質も向上し、経験値となるのでお互いにハッピーになるはずです。しかし、過去の経験で失敗をした後輩にものすごく怒り「このミスで自分にどれだけ迷惑をかけているか」ということを必死に訴えている人がいました。怒りの感情は分からなくはありません。ですが、そうしてミスをした人を責め、その人が辞めてしまうと損をするのは仕事を教えている本人です。人間は損失に強く反応してしまうので、感情のままに怒りを見せてしまうわけです。
得に対しては自制できても、損失に対しては多くの人は我慢が出来ません。そこにその人の人間性や器が現れてしまうのです。よく、男性が店員に横柄な態度を見せることで、女性が冷めてしまうという話がありますが、この話は怒りに対しての反応にがっかりしているということが多くありませんか?(店員がミスをして怒る男性に女性がゲンナリする、という具合に)。こうした話がよくあるということは、それだけ損失に強く反応してしまう人がいるということなのです。
人を見抜くには損失への姿勢を見ろ
私はその人が損失に対してどのように反応するのか?これを見るまで、その人の本性は分からないと思っています。
多くは仕事でそれが明らかになることが多いです。仕事とは自分の能力の限界を超えたタスクや状況になることが多いもの。パンパンに仕事をこなしているときに、次の仕事が振ってきた時に冷静でいられるでしょうか?自分の能力を超えた難しい仕事を振られた時にも、紳士な態度を保持していられるでしょうか?自分が佳境に陥っている時、黙ってそっと離れずに手を差し伸べるでしょうか?こうした時の態度にその人の人間性や器の大きさが全て出ます。
その人の人となりを見たければ、損失への姿勢を見ればいいのです。面接で言うならば「過去にどんな苦境に陥り、そこからどう乗り越えましたか?」これを聞けば簡単です。どんな人でも仕事で困難に陥った経験はあるものですから、この質問にどう答えるかでその人が見えてしまうと私は思っています。