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「都会の収入で、豊かな地方暮らし」という「いいとこ取り」は可能なのか?

黒坂岳央(くろさか たけを)だ。
■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

「お金を取るか?生活の質を取るか?」かつてはこの質問が成立していた。つまり、お金を取るなら東京に住み、その代わりに狭い家と人間関係の希薄さに我慢し、地方暮らしだとその逆になるという話だ。

「都会の収入で、豊かな地方暮らしはできるのか?」実際に都会の収入で地方に住んでいる筆者から、このテーマへ回答をしてみたい。

 

 

コロナで始まった「地方で都会の仕事をする正社員」

従来はリモートワークというのは、経営者、フリーランスだけに許されたワザだった。

しかし、コロナ禍でニュー・ノーマルが始まったことで、会社勤務する人にもそのチャンスがまわってきた。セミリモート、フルリモートの会社員も出てきて、「湘南の海岸線の海の見える家に住んで、リモートで渋谷の本社の仕事をこなす」なんて粋な人もSNSで見た。なんでも空き時間はサーフィンをするそうだ。いいね。楽しそうだ。

皮肉なことに、コロナ禍という驚異が新たな扉を開いたわけだが、これまで正社員として働くなら、こんな事は難しかった。その理由を解説したい。経営者の立場で言わせてもらうと、正社員を雇用するメリットはノウハウの蓄積と、ビジネスアワーにスタンバイモードという点にある。コストだけ見るなら、派遣社員とかアルバイトで良さそうだけど、熟練者でないとこなせない業務というのはあって、そうしたものをスキルと経験を蓄えた正社員が対応する。終身雇用を前提として長期雇用をする正社員だからこそ、長年の経験を通じて得た知見や技術というものはある。何でもかんでも外注はできない。業務を教えるのにも、時間は取られるので、熟練した正社員を抱えることで経営者は経営に専念できるのだ。

そしてビジネスアワー(9-18時など)は正社員は自社の業務にコミットしている、というスタンバイモードである意味合いも大きい。これが外注だと「今他者の業務をやっているので、終わり次第連絡します」と後回しにされることもある。ビジネスアワーなら、お願いをして即対応してもらえるのは、経営者が正社員を雇用することで享受できるメリットの1つだ。

コロナ禍の影響により、業務がオンラインに移行できた企業に勤務するフルリモートの会社員も増えた。米Twitter社は希望する社員は永久リモートを認めるとしている。そうなると、会社員にも「都会の収入で豊かに地方暮らし」が実現できるニューノーマルがやってきたわけだ。

 

「豊かな地方暮らし」の盲点

ただし、フルリモートが増えると言っても手放しでは喜べない事情もある。

プレジデントの記事「最強の選択肢「都会の収入で地方暮らし」に潜む6つのリスク」で執筆者の鈴木 貴博氏は、地方暮らしに潜む知られざる6つのリスクを解説している。この記事を読むと、「せやな」と感じる点があった。いずれもオンライン化ができない事項ばかりだ。いくつか取り上げたい。

同氏によると「地方ぐらしは人付き合いの幅が狭まる」という。都会だと、人の出会いに困ることは皆無だ。飲み会の度に新しいメンツから、新たな世界がもたらされることになり、それが酒の席の価値を高めてくれる。しかし地方だと人の出会いが限定的で、飲み会は毎回同じメンツ、これでは世界の広がりをリアルで体験することができない。オレは友達もいないし、夜はサッサと寝たいので、地方開催の飲み会は年に1回行くかどうかだが。

そして子供の教育だ。地方をディスる気は毛頭ないけど、事実として都会にある進学校私立のような教育は地方は弱い。まったくないとは言わないが、どうしても教育環境は東京に及ばない。母親の教育力で独学の力でハーバード首席卒業を実現した「廣津留すみれさん」のような事例もゼロではないが、これは例外だろう。子供時代の経験は、その後の人格形成や価値観に大きく影響を与えるので、子供の教育を考えるとどこに住むかは熟考する必要がある。

それから匿名性の消失。これは人によるだろう。オレは気にしない。移住したばかりの頃は、ショッピングモールで買い物をする姿が見られて、「この間、派手な服買ってたよねw」などとウワサされたり、二度目のレストラン来店で顔も名前も覚えられたりしたことに仰天していた。けど、これは慣れだ。積極的にボッチになれば、他人の目というノイズは聞こえなくなる。

その他、さまざまリスクがあるものの、都会で広い空間と上質な生活をするとなるとコストがデカくなるので、そことの天秤にかけて検討する必要があるだろう。

 

リスクを許容できるならアリ

結論的には、上述した地方暮らしのリスクを許容できるなら、「都会の収入で豊かに地方暮らしのいいとこ取りは可能」と言えるだろう。筆者は実際それを実感している。収入には十分満足しているし、田舎故に家の広さあるので子供が走り回っても無問題だ。ウワサされたりなどの田舎特有のリスクはすべて受け入れている。都会にはメディアや講演の仕事で時々いくので良い。

従来の「本音では都会に住みたくないけど、仕事のため」という価値観は変わり、意識的に「都会に住みたいか?地方に住みたいか?」という選択肢を仕事を抜きに考えることができると考えれば、より良い時代になったと思う。

黒坂 岳央

高級フルーツギフトショップ経営、雑誌・テレビのビジネスジャーナリスト、作家、講演家、投資家と幅広く活動。 元・高卒ニート&フリーターだが、米国大学留学を経て外資系勤務後に起業。 メルマガも書いてます→https://takeokurosaka.com/mailmagazine/

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