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GAFAが焦る中国のBATH、中国テック企業のリープフロッグは時間の問題だ

(画像はWashington Post紙に掲載された公聴会の動画キャプチャ)

 

黒坂岳央(くろさか たけを)だ。
■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

7月29日、米国議会はGAFAのCEOによる公聴会が開かれた。その様子はWashington Post紙に掲載され、その様子の動画も公開されている。同4社はプラットフォーマーと呼ばれ、巨額の利益やマーケットシェアを利用することで、競合他社を圧倒、それにより健全な市場原理を歪めていると問われている。たとえば、Facebook社はInstagramを買収したことで、競合を排除したとされる(Facebook社はこれに反論した)。

GAFAの時価総額は、400兆円規模に達しドイツのGDPに匹敵する。また、コロナショック後の株価高騰でGAFAにMicrosoftを加えたGAFAMの時価総額は東証一部のそれを上回った。もはや国家規模に相当するITテック群のGAFAだが、近年中国のBATHに脅かされると見る専門家が出てきた。同議会でも「我々とて安泰ではない。中国のテック企業によって激しい競争に脅かされている」とFacebook社のCEO・ザッカーバーグ氏が回答したのが印象的だった。

GAFAとて安泰ではない今、これからGAFAは中国BATHによってリープフロッグされるのだろうか?

 

 

中国はGAFAを遮断し、米国はBATHを受け入れる矛盾

中国は国家としてGAFAを遮断している一方で、米国は中国のITテックの利用を受けれてきた。

この非対称性が二カ国間の貿易戦争の火種になっており、近年において米国でTiktokやWechat、ファーウェイの排除への動きにつながっている。ポンペオ国務長官は「信用できない中国アプリを米国市場から排除する」と述べ、クリーンネットワークプログラムの必要性を説いた。これを受けて、劉暁明駐英中国大使は「自由貿易主義に反する行為だ。いじめに相当する」と非難したが、中国がこれまでGAFAを排除してきた矛盾には触れなかった。なんとも厚顔無恥な態度だと感じる。

懸念されるのは、米国が中国テックを排除することで同国にも痛みを伴うということである。著名アナリストのミンチー・クオ氏は

「iPhone Shipments Could Decline Up to 30% If Apple Forced to Remove WeChat From Worldwide App Store
(もしもアップルがWeChatを全世界のアップルストアから排除した場合、売上は30%落ちる可能性がある)」

と示唆している。中国人にとってWeChatはもはや生活必需品アプリとなるため、中国IT排除が米国の売上不信を招くことにもなる。

だが、それでも長い目で見れば「中国排除」の決断の時が来ている。これまで中国は米国を相手にビジネスをしてきたことで経済力を拡大させ、米国から科学技術を得て発展を遂げてきた。世界は中国共産党の一党独裁体制を好ましく思わずも、「経済発展とともに、共産主義国家は民主主義国家に変わるだろう」と中国の成長と変化を期待していた。だが、そんな予想とは裏腹に経済発展とともに中国共産党はますます驚異を増していき、大手ITのテックを通じて、富の支配を目論むようになった。米国が世界一強い国家である間に、手を打つことは不回避といえるだろう。

 

中国共産党と深い関わりを持つ、中国テックBATH

中国テックは単に成功したIT企業というだけでなく、中国共産党とも深い関わりを持っていることで知られる。同社も中国共産党をバックに付けたことで、大きく成長してきたのはもはや疑いようもない。

アリババCEOのジャック・マー氏は中国共産党に入党し、全人代で表彰も受けている。テンセントは本社前に「党とともに起業しよう」と書かれたモニュメントを置いている。ファーウェイは中国とロシアの首脳会談の場に呼ばれており、次世代通信規格5Gを中国牽引の立役者となっているのだ。中国テックBATHと共産党はともに成長を遂げてきたのだ。

そして今、中国BATHを通じて中国はデジタル界でも米国にビジネス戦争を仕掛けている。これは企業という一枚の壁を隔てた戦いだ。

 

中国によるリープフロッグの脅威

経済学には「リープフロッグ」と呼ぶ現象が存在する。リープフロッグとは、社会インフラが未整備の新興国において、新たな技術が投入されることで既存の技術が混在する先進国を追い抜く現象をいうものだ。

歴史的に見てもリープフロッグは世界で何度も起こっている。経済学者の野口悠紀雄氏は「第一次産業革命で蒸気で世界を変えた英国は、蒸気やガスの技術に囚われたことで他国にリープフロッグされた」と述べている。同様に中国でスマホが普及したのは、固定電話やFAXが浸透する前に携帯電話が飛び込んできたからだ。また、中国でキャッシュレスが広がる一方で、日本が未だに現金主義から脱することができないのも同様にこのリープフロッグ現象によるものといえる(ただし、我が国におけるコロナ感染者データ報告でのFAX活用は、テクノロジーの問題ではなく、データ統合上の問題だ。詳しくはプレジデントで執筆した拙記事「衝撃…世界が馬鹿にした日本のFAX、実は米国でもコロナ報告で普通に使っていた」を参照のこと)。日本が半導体において、一時期米国に追いつき、そして韓国に追い抜かれたのもリープフロッグによるものだ(しかし、韓国のケースは日本の半導体技術が不当に奪われたことが、敗北の本質的理由にある)。

IT界を作り上げたプラットフォーマーの米国GAFAは、中国大手テックにリープフロッグの憂き目に合う脅威に晒されている。中国には14億人もの民があり、個人情報保護もなく共産党が情報を握っている。そして中国の民間人も、当局による監視体制に安心を感じる人もおり、一部においてこの体制を迎合しているとすら言える。有意味性の高いデータを制する企業がITの王者になる。この事実を考えれば、中国がデジタル資本主義を制する「本質的な必然性」が存在するといえるだろう。

そうなると米国が必死に中国が覇権を握る防衛に奔走しても、それは中国が王者になる日を遠ざけているだけに過ぎない。冒頭に述べた米議会でのGAFAのCEOたちの焦りは、とてもよく理解できるのだ。

黒坂 岳央

高級フルーツギフトショップ経営、雑誌・テレビのビジネスジャーナリスト、作家、講演家、投資家と幅広く活動。 元・高卒ニート&フリーターだが、米国大学留学を経て外資系勤務後に起業。 メルマガも書いてます→https://takeokurosaka.com/mailmagazine/

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