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コロナに次に殺されるのは「大学」。大学教員の大量失業が始まった

黒坂岳央(くろさか たけを)だ。
■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

新型コロナはもたらした「リモート化」によって、都心のオフィスが空室化しつつある。オフィスワークにおける変容が取りざたされるが、大学におけるアカデミックの現場にも大きな影響を与えた。ユネスコの調査によると、世界の91.3%に相当する15億7,600万人が学校に通えなくなり、米国の大学では教員の大量解雇が始まったという。コロナは大学の現場にも大きな影を落とした。

新型コロナの感染症の脅威が直ちに去らない場合、同じことが我が国にも待ち受けるだろう。大学はオフィスの現場以上に深刻な生き残りを迫られている。

 

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コロナで危機に瀕する米国の大学

New York Timesが公開した「As the Virus Deepens Financial Trouble, Colleges Turn to Layoffs」により、今、米国の大学は危機的状況に瀕していることが明らかになった。テキサス大学サンアントニオ校は69人の講師を解雇、フリントのミシガン大学は、300人の講師の40%以上にメスが入り、オハイオ大学は3回ものレイオフを経験した。

その最大の理由は、州からの財政支援の縮小だ。キャンパスの利用なき大学では、食堂や売店、図書館などの利用も激減、大学は学生からキャンパス利用料の返還要請も受けている状況だ。

コロナにより入学する学生が激減し、州からの財政支援も縮小する中、米国の大学は未曾有の危機に瀕している。

 

オンライン授業は大学の職員をスリム化する

大学の講義形式には、大きく2分できる。1つは大教室で提供される、講師が一方的に話すスタイル、そしてもう1つは少人数で学生が活発に発言やワークをするなどの伴う、インタラクティブな講義だ。筆者は米国の大学に留学した際に、この両方を経験した。そしてコロナにより、大きな変容が迫られるのは前者である。

大教室での一方的な講義では毎回、学生が一箇所に集まり、講師は毎回同じ話をする。極めて非効率なこのあり方が残ってきたのは、「講義のライブ性」に価値の本質があったからだ。すなわち、手を伸ばせば届く距離に教師がおり、講師の熱量を感じながら、授業を受けているその瞬間に集中せざるを得ないライブ性があるからこそ、誰もがこの非効率性を受け入れており、大学も教員の雇用を維持することが出来た。

だが、オンライン授業へと移行するとライブ性の本質的価値が失われる。日々状況が変わるビジネスと異なり、たとえば経済学や心理学、言語学などアカデミックな本質的内容は大きく変わらない。故に録画配信で簡単に代替されてしまう。インタラクティブコンテンツでもないために、講義が上手な講師を雇い、1度録画をして配信するスタイルにすれば、常時、大学で彼らを抱える必要性がなくなる。大学教員だけでなく、関連する職員の仕事もスリム化するだろう。米国では2027年にも労働人口の半数がフリーランサーになるという予測があったが、コロナが大学教員のフリーランサー化を促進する可能性がある。

これが続けば、新たに出てくる大学はキャンパスのコンパクト化は免れない。教員も職員も大教室もそれほど多くを必要としなくなるからだ。

 

大学の本質的価値はオンラインで提供できない

筆者は大学に通う時分に、大学の本質的価値は講座ではなく、「キャンパスの美しさ」や「人との出会い」などにこそあると感じたものだ。そしてこれらはオンラインでは提供できない。

大学は4年間通う機関だ。殺風景なオフィスのようなビル内にある教室に魅力はない。だが、郊外の広々とした開放的なキャンパスに身を置いて学問に専念することの価値は、オンラインでは提供できない。筆者はイリノイ州シカゴにある大学に通った。長い人生の中で、アメリカで広大な敷地を贅沢に使った場所に身を置いた。スカイスクレイパーの高層ビル群の只中を散歩する途中、野生のリスに遭遇して仰天したあの生活をした経験は、お金では買えない価値がある。

また、大学は人との出会いも大きな価値だ。筆者はアップル本社でジェネラルマネージャーを務め、故・スティーブ・ジョブズ氏のプレゼンテーションに大きな影響を与えた、プレゼンテーションの第一人者の米国人と大学で話す機会に恵まれた。その時に受けた「コミュニケーション力」の筆者に与えた影響度は計り知れない。また、イギリスで経済学博士号を取得した教師にも、経済学の面白さを教わった。オンライン授業だけでは決して出会うことが出来なかった、素晴らしい人物は時に学生の人生を変えてしまう力がある。

コロナにより、本格的にオンライン授業が進めば、こうした価値を享受できない学生が生まれる可能性がある。素晴らしい人との出会いやキャンパスなき大学に、4年間の若い期間と膨大な巨費を投じる価値はあるのだろうか?

 

本格的に事態の悪化が始まるのは今秋から

悪いことにこの事態が本格的に深刻になるのは、今秋からだ。米国では世界から多くの留学生(とりわけ中国人)を迎える引力を持っている。米国はかつて、全世界の留学生の半数近くを受け入れていた「米国第一」の時期があった(現在では24%程度に減少した)。彼らの目的は大学でもたらされる高等教育のコンテンツだけではなく、卒業後に米国に在留して就労できるH1Bビザ制度の存在も大きかっただろう。

だが、そうしたものも失われつつある今、生き残りをかけて大学が本質的価値を問われるのは、これからである。

黒坂 岳央

高級フルーツギフトショップ経営、雑誌・テレビのビジネスジャーナリスト、作家、講演家、投資家と幅広く活動。 元・高卒ニート&フリーターだが、米国大学留学を経て外資系勤務後に起業。 メルマガも書いてます→https://takeokurosaka.com/mailmagazine/

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