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近年フリマアプリが窃盗フルーツを売る「令和の闇市」になっているワケ

(画像はたけしのTVタックル公式サイトより引用)

 

先日、2020年11月8日放送のテレビ朝日「たけしのTVタックル」という番組に出演し、フルーツの窃盗についてコメントをさせて頂いた。

 

▲番組でフルーツの窃盗事件についてコメントをする筆者

 

警察庁の発表によると、農作物窃盗の認知件数は2017年の1年間で2694件で、過去5年間で563件減少している。だが、さらにコロナ禍や天災の影響も手伝い、1件あたりの被害額は拡大している。

フルーツの窃盗事件は昔から起こっていた犯罪だ。オフィスビルと異なり、畑には鍵がかけられず、製造品とは違ってシリアルナンバーなども振られることはないために、現行犯逮捕以外は難しいからだ。また、近年になって従来には存在しなかった販路で盗品を売りさばくケースが増えている。時代の変化とともに、フルーツの窃盗事件を取り巻く状況にも変化が起きているのだ。

 

盗んだフルーツの販路

従来、フルーツの窃盗において販路は限定的だった。一般人がフルーツを売るのは、路上販売や市場への持ち込みなどがルートとして存在していた。

路上販売についていえば、軽トラに「産地直送」などと札を立てて販売するケースだ。もちろん、筆者はこのスタイルの100%が、盗品を売りさばく闇市になっているなどと言うつもりはない。シーズンを過ぎて直売所に客足が絶えて、首都圏駅前に出張して販売する農家も存在する。その一方で、組織的に窃盗に及んだグループが売り子のアルバイトを雇い、窃盗品を売りさばくケースもあるのだ。「この桃は何県産ですか?品種は?」などと、尋ねても答えられない怪しい売人が目撃されるなど、とうてい農家が作りすぎたフルーツを販売するとは思えないケースも多く存在する。このように路上販売がフルーツの盗品を売りさばくルートとして存在する。

また、市場への持ち込みでフルーツは販売できる。詳細は許せねえ!白菜窃盗事件のあまりにも気の毒な被害者という過去記事に書かせてもらったのだが、市場に盗品が持ち込まれて売りさばかれているのだ。

これらが窃盗フルーツの従来の販売ルートとなっていた。だが、いずれも目撃情報などから足がついて、後に余罪追求の過程や現行犯逮捕で検挙されていた。

 

新たな販路はフリマアプリ

だが、ここにきてフリマアプリが新たな盗品の販路ルートになっている。そしてこの販路は従来の足がつきやすいものと比べて、販売者側にリスクがない点が厄介だ。

具体的なサービス名や事例を引用をとりあげることは避けるが、明らかに盗品のフルーツを販売していると思しき出品ケースを見ることがある。商いとしてフルーツを販売する上では、明らかに利益が出ないような価格設定にしているのがその根拠である。

フルーツを遠方の相手に届けるのは、想像以上にコストがかかる行為だ。番組出演時にコメントさせて頂いたシャインマスカットの事例で、コスト構造を考えてみる。仮に東京と熊本間での送料についていえば、宅配便料金に加えてシャインマスカットを冷やすためのチルド便料金が必要となる。これらをあわせるとクロネコヤマト便の場合なら、60サイズで1,590円、80サイズなら1,810円もの配送コストがかかる。さらにシャインマスカットは傷みやすいので、緩衝材や配送途中で箱内で傷がつかない丁寧な梱包などのコストも要する。シャインマスカットの原価を考慮し、これに加えて利益も上乗せするとなると、本来はかなりの売価に設定しなければ利益は出ないはずだ。盗品でなければ利益を出すことが不可能な低価格で、コストと労力をかけ、忙しい農家がわざわざ出品して販売するという「経済的合理性の存在」を感じられない違和感漂う出品を見かけることがある。

しかし、素人目にはそれが盗品かどうかを判断するのは容易ではない。フルーツの配送におけるコスト構造を理解し、販売者側の立場で考えてから買うのは難しい。「安いな」と感じても「訳アリ品で在庫処分セール」などと書かれてしまうと、価格に納得してしまうだろう。

 

フリマアプリ業者は販売許可制度を導入せよ

フリマアプリはかねてより、盗品の販路になっているとの批判を受けて身分確認をするようになった。だが、ここで筆者から提言したいのは、生鮮食品を販売する者へのフルーツの販売許可を取得する制度の導入だ。

メーカー型番や製造番号が存在し、品質がある程度担保されているエレクトロニクス製品と異なり、生鮮食品にはそうしたものはない。それ故に個人販売における生鮮食品のトレーサビリティーや品質には保証がない。地方では兼業農家も少なくない。昼間はオフィスワーカーとして働き、土日は畑の面倒を見るというスタイルだ。「自宅の畑で取れた野菜」とは聞こえはいいものの、使用されている農薬なども目に見えないし、栽培プロセスもブラックボックスである。もちろん、ほとんどの生産者は誠実に健康的なものを作っているのは理解している。だが、購入者側と販売者側とでは、情報の非対称性があまりにも大きい。いざ、健康被害が出てしまったり、窃盗品であることが明らかになった時には、どうすればよいのか。

生鮮食品を販売する側が責任を持ち、盗品の販売ルートの温床とならないためにも、フリマアプリ業者は簡単な身分確認だけでなく、販売における一定の規定を設けるなどメスをいれるべきだ。盗品を販売するルートとして、フリマアプリはあまりにも強力すぎるツールになっているからである。

ここまで読んで頂いた方の中には「フリマアプリで盗品が売れる手口の公開がと窃盗を誘発しかねない!」と怒りを感じた人もいるかも知れない。だが、筆者は逆の意図を持っている。犯行手口を明らかにすることで、現行の制度の抜け穴へ一石を投じ、購入者側にも「明らかに異常に安価な物は買わないで欲しい」という注意喚起をしたいと思っている。

手塩をかけて農作物を育てた挙げ句、収穫間際で盗まれる苦しみは我が子を奪われるのに匹敵する。農家にとってはまさに痛恨の一撃だ。テレビ番組とこの記事を通じて、憎むべき犯罪が減る一助になればと心より願っている。

黒坂 岳央

高級フルーツギフトショップ経営、雑誌・テレビのビジネスジャーナリスト、作家、講演家、投資家と幅広く活動。 元・高卒ニート&フリーターだが、米国大学留学を経て外資系勤務後に起業。 メルマガも書いてます→https://takeokurosaka.com/mailmagazine/

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