「英検1級、TOEIC900点後半を持っていてもネイティブ同士の会話にはついていけない。結局、英語の勉強をしても永遠にネイティブ英語はわからないのだから語学学習は無駄」という意見を聞くことがあります。ですが、黒坂は世間で言われているこの話題に対して、他の人とはまったく違う意見を持っています。
結論を先にいうと、「ネイティブ英語を理解できない原因の半分は英語力不足ではない」ということです。これを理解しないまま、やみくもに英語の勉強だけをしても必ず英語力の伸びは頭打ちします。つまり、英語力だけ磨くのではなく、非英語力要素を磨くことでネイティブ英語についていけるようになれるということです。
この動画を最後まで見ていただくことで、今いった話の理由がしっかりと理解できます。ふんわりとした感覚論、感情論は一切なしでロジカル、科学的なアプローチで「ネイティブ英語が聞き取れない」を解明しましょう。その結果、日々の英語の勉強に迷いはなくなり、どこに力をいれれば効率的になるかが腹落ちして分かるのでぜひ最後までご視聴ください。
目次
1章 ネイティブ英語が聞き取れない2つの理由
1章始めましょう。ネイティブ英語が聞き取れないのは2つの理由があります。結論、英語力不足と背景知識不足ですね。
1.英語力不足
まず、英語力不足だとネイティブ英語が聞き取れないということが起きます。これは誰しもすぐに理解できると思います。たとえば英単語、英熟語がわからないとか、単語は分かるが文法力不足で全体として何を言っているかわからないという現象です。
そしてさらにネイティブ英語のリスニング、という話ですと2つの要素に分解できます。1つ目は英語の音理解、そしてもう1つは英語の処理速度です。1つ目の英語の音理解は、その単語をどう発音するか?英語の音の変化、くっついたり消失したりという知識や聞き取り経験が不足しているとわからなくなります。
たとえば「Get it on」の発音は、カタカナ英語でいうと「ゲット・イット・オン」です。しかし、英語の発音では流れるように発音されて、「ゲリットオン」に近い音になります。ゲットもイットもオンももはや誰一人原型をとどめていない。それを聞いて「え?ゲリラ豪雨?」とか言ってるうちは、そりゃ聞き取れませんて。こうした“音の変形”は、知識として覚えるだけでなく、「何度も聞いて慣れる」経験が必要です。原型を留めていない英語でも「お前、あたかも飛行機みたいな姿しとるけど、変形したZガンダムやろ!」って正体を見破れるようになります。
次に2つ目の英語の処理速度については、単語も文法も分かるが、リスニングが速くて頭の中で英語の内容を咀嚼する速度が落ち着かないということです。脳みそCPUがガラケーなのに、高画質4K動画撮影するようなもんです。でもこちらは仮に相手に非常にゆっくり話してもらえば、英語の処理速度が追いついて理解できるようになります。それから語順通りに英語を聞こえたまま意味を取る力も重要です。聞き終わってから意味を考えるクセがあると、速い英語にはついていけません。このあたりの話は過去動画で詳しく解説していますので、リスニング学習に困っている人はぜひご視聴ください。
2.背景知識不足
そして2つ目の原因が背景知識不足です。英検準1級、1級に合格、もしくはTOEIC800点以上を取る猛者の中で「ネイティブ英語がわからない」と枕を濡らしてる人の主要因は実がこちらです。
多くの人は背景知識不足と言われると、「ああ、歴史や政治の話題についていけないなら、その勉強をしろという話ね?もうその展開は読めたよ」と考えます。違う違う、今更そんな未満児用プールみたいな薄っぺらい話をしたいのではありません。背景知識不足こそが英語リスニングができない最大の理由なのに、多くの人はそこにメスを入れようとせず延々と英語の勉強ばかりしてしまいます。「痩せたい!」って言いながら、サラダにマヨネーズかけて「野菜だからセーフ」とか言ってる人と同じ。
結果、勉強してもリスニングがずっと苦手なので「自分に才能がないんだな」と落ち込み、がっかりし自己肯定感も低くなります。そうした人たちには「あなたの努力の方向性は間違っている」といいたいです。詳しく話をしましょう。
時に背景知識は純粋な言語能力以上に重要と言われます。背景知識が大事という話は、実は学術的にもバリバリ証明されてます。「言語理解において背景知識は単語の理解よりも重要」とされるスキーマ理論の研究や、「外国語のリスニング理解力は内容予測能力に大きく依存する」という研究結果もあります。
それからよく聞く話に、英語力はゼロだが明るくひょうきんな性格の人が来日する外国人に絡んでめちゃめちゃ笑いあって盛り上がってる、どうしても心が通じ合っているように見えるという話ってありますよね?英語がわからなくても「Oh! Shinjuku!」「Samurai!」「Tempura!!」って叫んでる人のほうがドッカンドッカン受けてわかり合えるみたいな話です。なぜこんなことが起きるのか?それは日本に来ている外国人に単語やジェスチャーだけでも、日本の話題を投げているからです。相手の外国人からのリアクションも自分がよく知る日本の話題だからですね。
それからこれは過去動画でも取り上げたことがありましたが、通訳者まで登りつめたのにネイティブ同士の英語がさっぱりわからない。だが、途中から一人の外国人が相手に日本の大阪の話しをし始めた瞬間、内容がすべて理解できるようになったという話ですね。話している相手も英語も全く同じなのに、話題が変わるだけで全くわからない→すべて理解できる、にスイッチを切り替えるように変わってしまったということです。
これまでの話から分かるように、背景知識は純粋な英語力以上に理解を決めてしまう原因です。でも英語学習者からすると、自分が英語を理解できないのは英語力が原因なのか?それとも背景知識不足が原因なのか?の判断がつきません。というか、背景知識不足がこれほどまでに理解に影響を及ぼすことを知らないので、全部英語力不足のせいにしてしまう。結果、英語をガリガリ頑張るのに一向に理解力が伸びずに挫折につながるということですね。
背景知識がどれほど重要かわかったところで、あなたが今抱えている疑問は「では私はどうすればいいか?」ですよね?よくわかっています。ではその疑問を解消するために2章へいきましょう。
2章 解決法「英語の多読多聴」
1章までの話で、ネイティブ英語の理解を決める要素は英語力が半分、そしてもう半分は背景知識だと話しました。2章からはでは背景知識を磨くにはどうすればいいか?について解説しましょう。結論、英語の多読多聴をすることです。
多読多聴は、単に英語に慣れるためだけではなく、文脈のある英語を大量に処理する過程で、“背景知識の貯金”を作るという目的としても非常に効果的です。そしてこの多読多聴をする上で非常に重要なポイントがいくつかありますので、2章で具体的に解説しましょう。
まず、多読多聴にふさわしい素材を選ぶことです。よく言われることに「幼児でも分かる絵本から始めよう」「絵がついているので漫画ならわかりやすい」みたいな意見です。でもこれは間違いだと思っていて、ネイティブ向けのものは絵本でも難しいことや、漫画がわかりやすいと言ってもまったく初見の外国作品は文化・背景の前提が難しいため、学習初期には不向きな場合が多いです。ではどんな素材がおすすめなのでしょうか?
1.英検
多読多聴向けの素材1つ目は英検です。「えっ、英検?中高生が受けるあの試験?」と思うかもしれませんが、準1級〜1級レベルになると中身はガチで海外ニュースや専門記事です。「それなら海外のニュースを直接読めばいいのでは?」と思うかもしれませんがそうではありません。背景知識がない日本人が初見で見ても分かる題材が選ばれていたり、日本語訳がついていて、問題形式で理解度をチェックできますし、さらに解説までついてきます。伸びる英語学習の本質は「理解できる内容を反復する」ということですから、英検はこの点をとっても最高の教材です。外国人向けの素材であるあるな初見殺しを避けることができます。一言でいうとゲームの攻略本みたいなもんですね。
正直、英検ほど充実した多読多聴素材は他にありませんので、ある程度英語力をつけた人は英検を学習素材にして英語を大量に消化する習慣を身に着けていきましょう。
2.国内向け英語ニュース記事や番組
多読多聴向けの素材2つ目は国内向け英語ニュース記事や番組です。具体的にいうと、Japan Times AlphaやNHK英語ニュースです。CNNやBBCニュースも活用してもいいですが、海外のニュースを取り上げたものは、その国の政治や経済なども絡んできて英語力だけでは理解出来ないものもあります。「ワイは高貴なイギリス英語バリバリのBBCで鍛えるんや!」って鼻息荒く突撃すると、本当に“イギリスの空気”だけ吸って終わることになります。一方で、日本国内のニュースなら、逆に多少英語力が不足気味でも背景知識が理解を助けてくれます。
さらにこうした英語ニュース記事や番組は、毎日の習慣化として定着しやすく、読書やドラマ視聴と違ってネタ探しの労力がいりません。具体的におすすめのニュースサイトや番組についてはこちらの過去動画を参考にしてください。
3.自分の興味があるコンテンツ消化
多読多聴向けの素材3つ目は自分の興味があるコンテンツ消化です。これは「背景知識をつけるため」というより「背景知識の補助を得て多読多聴を磨いて英語力を伸ばす」という目的があります。
具体的に言うと、趣味のゲームやファッションの発信をするSNSや動画チャンネルをフォローするとか、ビジネスや投資に関心がある人は英語の経済情報を追いかける、AIやITに興味がある人は海外のアプリを実際に使うといったものです。もうね、オタク趣味がある人ほど伸びやすい世界です。人生で初めてオタ活が報われる瞬間キタコレ。
黒坂は経済・金融情報やIT情報を得るために、フォローしている海外のYouTubeチャンネルを見ています。日本語では出てこない先端のテクノロジーを取り扱っていたり、日本語の番組より情報の鮮度や深さがあったりで非常に学びになります。自分が興味関心、背景知識がある番組ならスムーズに理解できます。たとえると「宝箱の場所を全部知ってるドラクエ状態」で背景知識が英語の理解を助けてくれます。
直接、背景知識をつけるという活動にあてはまらないように感じるかもしれませんが、外国人ならではの視点とか価値観、文化が反映されていることを咀嚼する経験にはなるのでおすすめです。
3章 英語学習者から英語ユーザーになれ
さて、ラスト3章は英語学習者から英語ユーザーになれという話をします。2章までは背景知識をつけるために、多読多聴をしようと言いました。ですが、多読多聴はあくまでインプットなので、できれば「背景知識を考慮したうえでアウトプットができる人」になる力が追加で必要です。そうなると結論としては、理想の最終形は英語学習者を卒業して、英語ユーザーになることです。学習者は英語そのものを勉強する人、そして英語ユーザーは英語を仕事や留学など活用する人です。“料理本を100冊読んでる人”と“毎晩キッチンで切ってる人”くらいの違いがあります。具体的に解説しましょう。
まず、純粋な英語力を磨くべきレベルは明確に決まっています。ざっくり英検準1級合格、TOEIC800点くらいが目安です。人によっては1級、TOEIC900点まで必要というケースもあります。2章で紹介したような多読多聴を日々のルーチンに落とし込んだら、その後はいつまでも英語力を磨き続けるより一日も早く英語ユーザーを目指すべきです。その方がトータルで見て、“使える英語力”を高めていくことができます。
黒坂がアメリカに留学した当初は右も左もわからず、大学も大学寮の仕組みもよく理解できなかったです。大学からもらった電車の定期券も使い方で手間取っていました。でもしばらく生活をしてルーチンができて全体像が見えると、いきなりスムーズに英語やあらゆる手順を理解できる自分に変化したと感じました。これは純粋な英語力が上がったというより、背景知識が作られたことで理解を格段に引き上げたということですね。これは留学英語で必要な手順などをユーザーとして一通り経験したことで力がついたと言えます。
背景知識がある強さは、仮に少し理解の穴があっても瞬時に背景知識が塞いでくれるからです。日本人同士、日本語で会話をしていても、聞き取れない音、発音されていない音は山ほどあるのにスムーズに理解できます。たとえばあなたがリビングでスマホをいじっているとき、キッチンから母親が何か言っているのが聞こえたとしましょう。「ごめーん、ちょっと◯◯取って〜」と。でも肝心な「◯◯」の部分が水の音で聞こえなかったとします。でもあなたは「母親がキッチンで肉を焼いている音がする」「料理中に塩、醤油、コショウを取ってと頼まれることがある」という背景情報と経験があって、過去のやりとりから「これは……塩!」(※完全にコナンの推理)と予測できるため、あなたは自然と塩を手に取って渡せます。
ちなみにこれは英語でも同じ。
A: That sounds like so much fun.(めっちゃ楽しそう!)
B: OK, do you wanna ***?(じゃあ、◯◯する?)
と聞き取れない音があっても話の流れから、comeが来ると推測できます。 このようにすべてを完璧に聞き取れないと理解できない訳では無いですし、逆に一言一句聞き取れても理解できるとも限らないということです。
それから外資系で働く人あるあるとして、仕事で使うビジネス英語、専門英語はものすごく上手でそつなくこなせるのに、仲良くなった外国人の同僚と遊んだりプライベート話をするとそれにはついていけないというものです。でも、同じ人とつるむことで、徐々に相手の性格、価値観、考え方が理解できるようになって、プライベートでも理解し合えるようになるということです。たとえるとその人専用の取説を作った状態。これも英語力が伸びたというより背景知識の力によるものです。黒坂がいつも「永遠に英語学習者をするのではなく、ビジネス英語の入口についたら早く英語ユーザーになれ」といっているのは、背景知識は机の上では身につかず、実際に外国人と会話したり、英語で仕事をする経験からしか身につかないからです。
一生懸命英語の勉強をして上級者レベルに到達した人ほど、ネイティブ英語がわからないと落ち込むことが多いです。でもそれは厳密に言えば、原因を別の部分だと誤解しているといえます。どれだけ英語力が高くても背景知識がない話はまったく理解できません。それは日本語でも同じで、Zガンダムを見たことがない人に最終回でカミーユが精神崩壊して廃人になった展開を熱く語られても「お前は何を言っているんだ」って理解できないと思います。黒坂は哲学者同士の超難解な会話を聞いて、間違いなく日本語のはずなのに何を言っているか1つもわからなかった経験があります。英語学習をする上でわからないことがあったら、すべてを英語力不足のせいにするべきではありません。確かに半分は言語能力が理由ですが、もう半分は背景知識が理由です。冷静に原因を見極めて自己肯定感をむやみに削らないように勉強を進めていきましょう。
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