今回は英会話訓練を始めるベストなタイミング、というテーマでお話をします。最初に結論から言います。英会話は“早く始めるほど損”をします。実は英会話を始めるべきベストなタイミングというのを論理的に明確な答えを出るのですが、多くの人が耳にするアドバイスは真逆です。
「とにかく口を動かせば慣れる!」
「海外に出れば自然に覚える!」
「日本人は勉強ばかりで英会話しないから伸びない!」
世の中にはこういうフレーズで溢れていますよね?でも騙されないでください。現実はむしろ“早すぎる英会話のスタート”こそが学習者を伸び悩みに直行させます。
では、いつ始めるのがベストなのか?結論、英会話を始めるベストなタイミングは「英検2級・TOEIC600点」を突破してから。理想を言うなら「英検準1級・TOEIC800点」です。このレベルに到達してから始めると、英会話中に「言いたいことが出てこない」「相手の返事がまるで理解できない」といった壁にぶつかっても、自分で調べて壁を乗り越えて、英会話のたびにPDCAを自力で回せるステージに入ります。つまり、「英会話で通じなかった部分を調べて改善」「より良い言い回しを探す」といった改善と成長サイクルを回せて、英会話をする中だけで英会話力を伸ばせるステージにいけます。
逆に早すぎる英会話訓練は、早すぎる伸び悩みの壁にぶつかるだけで、それを乗り越える力もなければいつまでも英語がわからない屈辱と、時間とレッスン代をムダにする苦痛に耐える金ドブな苦行に成り下がるので損をします。急ぎすぎて初期装備でラストダンジョンに行って返り討ちにあうのと同じくらいアホです。
なぜそう言い切れるのか?この動画では論理的に数字と事例を交えながら解説していきましょう。
1章では英会話を始めるベストタイミングの根拠について解説をします。最初にお話した通り、最低でも英検2級・TOEIC600点、理想は英検準1級・TOEIC800点を取れるようになってから始めましょうと言いました。ですが、それだけでは「そこまで英語力を高めるのに時間がかかるから、やっぱり遠回りでは?」という意見や「いやいや、もっと英語力を高めてからがいい」とみたいな反論が出てきます。はいはい、今日も出ました、素人の逆張り評論家。もうこの手の意見、吉本新喜劇でコケるシーンぐらい毎回出てきます。
でも大丈夫、ちゃんとロジックとデータで逆張り評論家どもをボコボコにします。この章では英会話を始めるベストタイミングはなぜ、これらのレベルからが始めるのがいいのか?という納得の行く根拠をデータを示しながら解説をします。
1.CEFR B1レベル(英検2級・TOEIC600点)
まず、英検2級・TOEIC600はCEFRのB1レベルです。CEFRはテストや教材・授業で広く使われている語学能力の国際指標で、世界中の多くの言語教育機関や語学試験で採用されている信頼性の高い指標です。そしてB1は「日常生活に必要な基礎的なコミュニケーションが成立する」というレベル感です。例えば旅行や日常生活におけるやり取りで英語で道を尋ねる、レストランで注文する、簡単な業務連絡をこなすといった場面なら処理できるイメージですね。
この段階で会話を始めれば、最初は詰まることも多いですが意思疎通は可能です。「なんだ、全然しょぼいじゃん」と画面の向こう側で英語警察たちが笑っていますが、そう思うのはまだ早い。重要なのはB1は「英会話を自力で改善できるレベル」ということです。わからない単語を後で調べる、使えなかった表現を別の言い方に置き換える、と英会話でPDCAを自走で回せるスタートラインがB1以上からです。
ただ語彙力や言い回しはまだ十分ではなく、フォーマルな言い方や仕事で必要な英会話が十分でない部分も残るので、英会話の練習をしながら傍らで引き続き語彙力アップやインプットは引き続き継続する必要があります。
2.CEFR B2レベル(英検準1級・TOEIC800点)
では次に英検準1級・TOEIC800点のレベルを見てみましょう。CEFRのB2レベルに相当します。このレベルに達すると、会話の“即応力”が一段増すイメージです。相手の発話を理解するだけでなく、「少し回りくどい言い方でも伝える」「相手の言葉を別の形で確認する」といったテクニックが使えるようになります。加えてビジネス英会話に必要な「失礼にならない婉曲表現」「フォーマルな言い回し」なんかもわかるようになるので、ビジネス英語の入口に立つことができます。
この段階から、英会話は単なる“フレーズ暗記”の世界を脱し、「英会話をするたびに自己成長、改善できるステージ」になります。この段階で“英会話をする中だけで上達できる”という残業代が出る飲み会くらいお得なフェーズになります。
さて、ここまで見てきた通りB1・B2レベルに到達してから英会話をしろと言ってきました。ではここからはその根拠をお話します。結論、その根拠は「語彙カバレッジ」にあります。文章や会話の理解度は「既知語の割合」で大きく左右されることが多くの外国語研究でわかっています。語彙というのはわからない言葉が1つ増えるたびに、会話内容の理解度を大きく減少させることで知られています。データを示すと
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カバレッジ95%:内容の大筋は理解可能。
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カバレッジ98%:ほぼストレスなく理解可能。
という具合です。英会話に必要な語彙数に置き換えると、95%理解には約3,000語、98%理解には6,000〜7,000語が必要とされます。英検2級=約3,500〜4,000語、準1級=約7,500語とされるので、試験レベルとカバレッジの理論がピタッと一致するわけです。
逆に、準2級やTOEIC500点台程度では、知らない単語が会話に頻出します。結果、相手の発言が途切れ途切れにしか理解できない。電波悪い場所でLine通話するくらいストレスフルで、まったく英会話を楽しめません。だからこそ、英検2級レベルを突破する前に会話練習に全振りするのは非効率で、会話を始めた時点でできるだけ語彙力の障害を取り除いて始めるほうがトータルの学習効率は圧倒的に高まると言えます。
2章 場数だけ踏んでも英会話は上達しない
よくあるアドバイスに「とにかく場数を踏め!」というものがあります。留学やオンライン英会話に飛び込めば、勝手に口が回りだす…という「あるあるあ…ねーよ」的な幻想です。
ですが、インプットなしのアウトプットは不可能です。たとえば、あなたが突然アラビア語の国に放り込まれたとしましょう。けれど、あなたが語彙も文法もゼロなら、10年経っても理解はできません。これは脳科学的の観点でも説明が出来ます。脳は理解できない会話を「雑音」として処理をするので、知識として蓄積せず捨ててしまいます。脳は理解できる会話しか聞き取ろうとしません。なのでその状態でどれだけ場数を踏んでも積み上がらないので無意味です。
その逆に脳は理解できる内容に強く反応します。周囲がアラビア語の中、いきなり「カツサンド!」と聞こえて来たらあなたの脳は他のアラビア語をノイズキャンセリングしてその日本語に強くフォーカスして理解しようとします。この特性を理解すると、基礎を持った人が場数を踏めば、理解と改善が循環して飛躍的に伸びることがわかりますよね?なぜなら理解できる会話として英語をリスニングし、そして知識として定着するからです。
「でも外国人の中には場数を踏んで語学力を伸ばしたという人が多いじゃないか」という反論があります。これを聞くと、やっぱり場数を踏むことが大正義に思えますよね?しかし、実際にはそう単純ではありません。黒坂が知っている事例を二つご紹介します。
一つ目は、アメリカから日本に留学した二人の友人です。二人とも日本の大学に長期滞在し、日本語漬けの環境で生活をしていました。一人はアメリカにいる時から日本語を必死に勉強して、留学後は日本語能力試験のJLPT1級に合格、その後も日本語力を高めて日本の企業に就職しましたが、もう一人はアメリカにいる時はほとんど日本語の勉強をせずに留学しました。彼は何度挑戦しても1級に合格できず、希望する仕事にも就けませんでした。帰国前は日本語を話そうとしなくなり、日本でも英語を話していました。
両者とも“場数”は十分に踏んだのに、事前準備の有無で成果は大きく分かれたのです。基礎やインプットをしっかり固めてから留学した彼は日本語が上達しましたが、基礎が弱いまま飛び込んだ彼は周囲の日本語が“雑音処理”されて、脳に蓄積されなかったのです。
二つ目は、黒坂がアメリカの大学留学中に出会ったイタリア人女性のケースです。彼女は夏休みを親戚のいるフランスで過ごしただけで、日常会話のレベルのフランス語をスムーズに話せるようになったと言っていました。ところが彼女はその後、日本の大学に10年近く通い、日本語漬けで生活しましたが日本語は思うように伸びなかったと言っていました。英語・イタリア語・フランス語を自在に操るトリリンガルであっても、日本語習得には大きな壁があったのです。これはイタリア語とフランス語のように語彙や文法の共通点が多く、言語距離が近いため短期間で大きな苦労なく上達したのであって、言語距離が遠い日本語の取得は難しかったということです。
言語距離とは、母国語と外国語との距離のことをいい、たとえば日本人にとって韓国語は比較的簡単に身に着けられるという話がありますが、それは語彙、文法、発音など共通点が多く、つまり言語距離が近いからです。でも別の国の人が韓国語を勉強すると取得するのに莫大なエネルギーが必要という人もいます。なので、外国語と母国語の距離によって取得難易度はまったく違ってくるということです。
米国務省(FSI)の調査では、日本語は「英語話者が学ぶのに最難関の言語」に分類されており、習得に約2,200時間が必要とされます。一方、フランス語やスペイン語は600時間程度。つまりヨーロッパ人が外国語を習得するのは、マラソンではなく短距離走のようなもの。一方、日本人はフルマラソン以上の距離を走らねばならないのでまったく同列に比べられるものではないです。この現実を知らずに「ヨーロッパの人のように海外に出て場数を踏めば自然に伸びる」と信じるのは危険です。条件が全く違うのです。
ここまで「早すぎる会話は非効率」と述べてきましたが、自分に都合のいい話ばかりするのはフェアではないので例外もちゃんと話しておきましょう。それは“サバイバルイングリッシュ”を目的とする場合です。具体的にいうと、空港で入国審査、ホテルのチェックイン、レストランでの注文など。決まった場面に特化したフレーズ暗記は有効です。それから急な英語会議や面接で必要最低限の受け答えをするために、台本を仕込んで臨むのは合理的です。
つまり、「会話で力を伸ばす」のではなく「一時的な対応や慣れ」に絞るのなら、早期会話もアリです。ただし、多くの人は同じ感覚で実践的な英会話力をつけようと考えるから“本格的な成長戦略”と混同して無事死亡します。
語学学習者の多くは「最短ルート」を探します。「留学すれば最速」「会話だけやれば効率的」「洋画を浴びれば勝手に伸びる」こうした甘い言葉に惹かれがちです。しかし現実は逆です。近道に見える方法は最も遠回り。遠回りに見える方法こそ最も近道です。
これはスポーツでも同じで、基礎トレーニングをすっ飛ばして試合に出続ける選手は、最初は勢いがあってもすぐに頭打ちします。筋トレや基礎技術を徹底的に仕込んだ選手こそ、長期的に伸び続けます。語学も同じ「基礎とインプットがアウトプットの伸びを決める世界」です。基礎というのはそれ以上削ることが出来ない最低限必須事項のことをいうのに、なぜかその基礎をすっ飛ばそうという裏技話やハック話ばかりが世の中に溢れています。そうした楽をしたい人間心理につけこんで稼ごうとする拝金主義者のセールストークに騙されないでください。地道に時間をかけ、でも確実に力をつける王道を進めていきましょう。
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