今日は「2倍の倍速再生で英語リスニングを伸ばす」という、ちょっと衝撃的なテーマでお話をします。
「え、2倍速なんて聞き取れるわけないがな。無意味な聞き流しになるだけやろがい。怪しい健康サプリみたいな話すな」って、その気持ちわかります。2倍速で速聴訓練って、まるで10倍の重力で修行するドラゴンボールみたいな話ですよね?
でも結論からいいます。英語の倍速リスニングは“やり方次第で”ちゃんと効果の高いトレーニングになります。ただし、脳みそ空っぽでただ倍速リスニングすればドンドン伸びるというわけではありません。効果が出るのは正しい順番と勉強法で取り組む必要があります。
この動画を作るにあたっては、間違えた内容をお伝えしないよう、再現性、科学的根拠を分析してちゃんと裏取りをしました。黒坂は誇大広告はしませんし、魔法も出しません。科学的根拠と再現性のある戦略的な勉強法に昇華させてお届けします。
わかっています。まだまだ疑いながら聞いている人、いますよね?それならぜひ、この話をAIにかけてその妥当性を自分の目で検証をしてください。自信を持ってお届け出来る内容に仕上がっています。というか、今回の話は有料課金したAIでのファクトチェック、数々の言語学研究の論文も通してお届けています。
黒坂は若い頃、速聴プログラムで頭の回転速度を上げるという、高額詐欺詐欺Pro Max商材を買って大損をしたことがあります。そのため、人一倍、速聴というワードには警戒心が強く疑い深いですが、そんな黒坂が納得行くまで調べたものとしてお届けするので見る価値は高いと思います。
今回の動画は本当に英語の倍速再生でリスニング力が上がるということを解説します。あなたは具体的な勉強法だけでなく、やったらダメなこともわかりますので、ぜひ最後までご視聴下さい。
目次
第1章 速聴がリスニング力アップになる科学的根拠
そもそもの話として、英語、日本語に関係なく速聴は頭の回転速度を高めるという話をします。
小難しい科学的な話は抜きにして、これって誰でも腑に落ちる話です。YouTubeが流行り始めた時、当然ですがすべての人は1倍速、つまりは普通の速度で動画を見ていました。ところがアプリの進化で1.5倍、2倍速と速さを選択できるようになり、最近ではYouTube Premiumは3倍速が標準アプリに搭載されるようになりました。まあ、飲み会のオッサンの武勇伝だけはデフォルトで3倍速でお願いしたいところですけどね。
今では多くの人が、当たり前のように倍速再生をして、同じ時間でより多くのコンテンツを見ていますよね?でも誰もが初めて倍速再生をした時、「いやいや、こんな速さで聞いてもさっぱりわからねえよ」と思ったんじゃないでしょうか?
ところが、速いながらも我慢して聞いていると、徐々に慣れてきて1.2倍、1.5倍、そして2倍と速度を上げて時短でコンテンツ消費をするようになっていったはずです。この状況証拠からも、最初は速いと感じる再生速度でも、慣れればあっという間に2倍速が標準になり、久しぶりに1倍で聞くとまるでスローモーションのように感じる、というのは誰の身にも起こると分かります。
この話は高速道路にたとえることができます。高速道路を時速100kmで1時間走った後、制限速度50kmの下道に戻るとつい遅いと感じて速度超過になってスピード違反で捕まる、というのと同じ話です。いやあ…これ昔実際にやらかした悲しき体験談なんですけどね…。高速道路で走り慣れた人が頭の回転ギアを上げて、時速100kmを最初は速いと感じましたが、すぐに慣れてまるで時速50kmくらいに感じるようになったわけです。もちろん、個人差も大きいですが、このように人間の脳は情報の速さに適応する能力を持っています。
英語でも全く同じ事が起きます。英語学習者はテキスト教材、英検、TOEICなどのリスニングに慣れています。ところが映画やドラマでネイティブ英会話を聞くと「とんでもなく速い!」と驚いてしまいますよね?ところが、普段から映画やドラマを楽しみ、留学などで海外生活に慣れている人が、英検やTOEICのリスニング問題を聞くとスローモーションのように感じられます。つまり、普段から速度の速い英語リスニングになればおけば、それよりゆっくりした英語は余裕で聞き取れるようになる、ということです。
「今の話、ホンマでっか?」と疑う気持ちはよく分かります。大丈夫、ちゃんと効果検証しました。ここで科学的根拠を見てみましょう。倍速音声を使って、人がどのくらいで速い会話に慣れるか?を分析した研究があります。1998年と2009年に行われた時間圧縮音声の知覚学習研究です。そこで明らかになった重要ポイントを3つ紹介します。
1つ目は比較的短時間の訓練でも、多くの人はあっという間に速さに慣れるということです。実際に倍速英語を聞くと、「うわあ、早すぎて自分には無理」と感じても、音声を反復して聞くと10-20分の比較的短期間であっという間に速い英語がわかるようになる人もいます。難しい言葉でいうと、可聴の閾値(いきち)が下がり、知覚のスループットが改善すると言われます。まあガンダムの専門用語みたいに難しい話は置いといて、簡単に言うと、速い英語に慣れるには長い期間が必要なようで、実際は思ったより早く慣れるということが研究で観測されています。
2つ目は学習は“条件に特異的”になりやすいということです。なんのこっちゃ?大丈夫、簡単にいいましょう。つまり、同じ話者の会話、発音、話し方だけでリスニング訓練すると、その話者の英語に適用するという話です。なのでいざ話者が変わったり、アメリカ英語からイギリス英語に切り替わると一気に理解度が落ちます。たとえると黒坂のように超早口のYouTuberを倍速再生で慣れても、他の早口YouTuberの倍速再生を一発目で聞き取るのは難しく、その人の早口に慣れる期間が別に必要ということです。つまり、黒坂の動画見すぎるとあなたは黒坂耳になるってことですね。
3つ目は倍速リスニングは全体的な英語リスニング効果が期待できます。2では話者や発音が変わると新たに慣れが必要と言いました。「まじかよ人生オワタ」って絶望するのはまだ早い。話者が変わると高速リスニング訓練の力がまったくのゼロになるわけではないです。なので、普段から速い英語に慣れておくと、英語リスニング力全体を底上げするいい影響を与えるといえます。
では次に英語倍速リスニングで何が鍛えられるか?を見てみましょう。
1つ目はすでに話した通り、リスニング理解度が上がるということです。英語音声が速いほど、当然同じ時間当たりの情報量が圧縮されます。たとえると1時間の動画を2倍速なら、30分で同じ情報量を処理することになりますよね?脳は同じ時間で倍の情報量を高速処理しようとします。高速処理に慣れれば、それよりゆっくりな英語が聞き取りやすくなるということですね。
2つ目に英単語の引き出し力があがります。これはどういうことでしょうか?たとえば英語をゆっくりリーディングする、非常に遅い英語をリスニングする時、脳内で単語が聞こえた後に脳内の図書館から単語を検索します。これがクセづいてしまうと、ナチュラル速度でのリスニングについていけず、英単語を思い出す間にドンドン会話が進行してしまいます。ところが、倍速再生で英語を聞き続けることで、英単語の想起が脳内図書館から意味を探し出す作業から、聞こえてきた音そのものから意味を引き出す、単語マッピング力が鍛えられます。脳は毎回、単語を脳の図書館から引っ張り出すのに間に合わないので、音そのものから情報を引き出すモードになるということですね。その結果、理解度の速度が上がるので快適な英会話が出来るようになります。たとえると、HDDからSSDに変えることで読み込み速度が上がる、みたいな話ですね。
3つ目に文脈化の強化です。英語の速聴は次に来る語を予測する質を上げる練習になります。スマホをポチポチ打つと、入力が進むにつれて予測変換候補が絞り込まれるように、英語リスニングが進行するたびに、その次に来る語の候補を絞り込む“トップダウン処理”というものが起きます。結論、速聴リスニング訓練で速い英語に慣れるとこの予測処理も早くなります。予測の精度が高まるほど、実際に明確に発音されなかったり、音が多少崩れていても会話を聞き取るリスニング理解が落ちにくくなります。英語速聴は今言った3つの能力に圧力を加えることで能力強化が期待できます。
第2章 速聴リスニングの独学勉強法
さて、第1章では「なぜ速聴が効くのか」という科学的根拠を見てきました。ここからは、いよいよ実践パートに入ります。速聴は闇雲にスピードを上げれば伸びるわけではありません。最初に結論を言うと「理解を伴うリスニングになっていること」これが生命線です。最もダメなのがいきなり2倍速で聞き始めること。冷静に考えれば日本語の動画を2倍速で慣れる人も、元は1倍速を聞ける状態だったはず。なので、1倍速で聞けない英語を2倍速でリスニングするのは全くの無意味、耳に入れたそばからせっせとノイズとして捨てるだけなので時間の無駄になります。
速聴は雑にやると、速すぎる英語で理解を捨てて聞き流しモードに陥りやすいので、普通のリスニング以上に戦略的に取り組む必要があります。でもちゃんと戦略的に取り組めばリスニング力アップになりますから、たとえるとレバレッジ投資のようなハイリスク・ハイリターン商品と捉えて下さい。なので初心者はやらないでください。今から言うやり方はざっくりした目安で、英検2級合格・TOEIC600点以上の中級者だけがやる想定としてお考え下さい。
では具体的に解説していきましょう。
ステップ1.事前リーディング
まずは「速聴リスニングに飛び込む前の準備体操」をします。
一言で言えば、事前にリーディングをします。動画素材、たとえばニュース・TED・YouTubeでも何でも構いません。字幕、スクリプトをリーディングして内容を頭に入れましょう。これで頭の中に「内容の地図」ができます。高速道路を走る前にカーナビでルート確認をしておくイメージで、英会話の内容、展開、結論が入った状態を作ることが出来ます。
たとえると冷たいプールに飛び込む前の準備体操のようなものですね。これやらずに冬場のプールに飛び込んで「うおお、でも寒さに慣れてきた!」となる前に凍ってしまいます。
ステップ2.速度ラダー
次は速度の階段上げです。これは速聴の基礎中の基礎。必ず守るようにしてください。
一発目は必ず、1.0倍速、つまり普通のナチュラル速度でリスニングします。事前にリーディングをしていますからついていけるはずです。そうしたら、2回目、3回目は1.25倍、1.5倍、そして最後に2倍速にします。機械的に速度を上げるのではなく、この内容は1.5倍速で限界、と感じたらそこで止めます。100倍の重力で悟空が修行したのを真似て、無理に2倍速で我慢してリスニングしても意味を伴わないなら、その時間はすべて無意味です。勇気を持って速度を落としましょう。
そしてここでのポイントは理解度70〜80%です。速聴リスニングといっても「100%完全理解」でなくてもOKです。2倍速となると、1.0倍速と比べて理解が7割くらいに落ちやすいですが、あまり気にしないでください。ここでは「速さの限界値」に触れておく自体が脳へのプラスの刺激になります。
ステップ3.超短距離スプリント
そしてここからの話は、英語上級者だけやってください。ズバリ、15〜25秒だけ2.5〜3.0倍で聞きましょう。「いやいや、3倍なんて無理ゲーでしょ!」と思うかもしれません。わかっています。当然聞き取れません。それでOKです。重要なのは、3.0倍速直後に1.25倍に落とすこと。すると、さっきは1.25倍速でヒイヒイいっていた音が急に「解像度が高く」聞こえる感覚を味わえます。これが超速度に慣れた脳の適応反応です。これは脳は高速音声にあわせて高速処理に変わったのですが、1.25倍のリスニングをゆっくりに感じる、ということです。
ただ、このステップ3についてだけは、他の項目より科学的再現性が若干薄いです。「誰にでも必ず起こるのではなく、再現される人も見られた」くらいのニュアンスで聞いてください。黒坂個人は再現することを確認しましたし、他の方でも同じような主張をされている事例もあるので一応紹介しておきます。
ステップ4.シャドウイングで整える
そして仕上げにシャドウイングです。1.25倍で英語音声を流し、それを.ピリオドまでの文単位で区切りながら、後追いで口を動かします。
なぜシャドウイングをする必要があるのでしょうか?速聴リスニングだけだと「聞いているようで、実際には雑な聞き流し」になりがちですが、シャドウイングを取り入れることで強制的に「雑なリスニング」から「精密リスニング」を入れることが出来ます。
すべて100%完璧なシャドウイングができなくて構いません。そもそも、1.25倍速ですからシャドウイングもナイトメアモードに難しいです。ですが、シャドウイング自体が高い集中力を作り出して、精度高くリスニングをしようという姿勢を生み出します。
ステップ5.転移訓練
最後に別話者・別題材の素材に切り替えて訓練を続けるようにしましょう。最初にお話した通り、同じ話者、同じ発音だけで訓練すると、その話者や発音に特化して訓練されますので、話し手が変わると一気に理解度が落ちます。この「特異性ブロック」を防ぐためにいろんな英語でステップ1から4を訓練します。
第3章:速聴リスニングでやってはいけないこと
2章までの話で力のつく勉強法をお伝えしました。ここからは油断するとやりがちな、やっても効果がないNG勉強法を解説します。
1.最初から2倍速で突っ走る
「色々考えるのが面倒くさいし、やっていれば慣れるでしょ」このような脳みそサラダチキン精神で最初から2倍速でぶっ飛ばすと効果がゼロになります。理由はシンプル。理解が伴わないからです。ざっくり感として理解度が3割以下に落ちると、脳は入ってきた情報を「ノイズ、つまりゴミ」と判断して入力した情報を捨ててしまいます。積み上がらない知識、資産化しない修行はブラック企業のボロ株を積み立てて資産運用を目指すレベルに無意味です。いや、それ積み上がりませんから。
理解度100%でなくてもいいですが、7割は維持するように常に意識して取り組みましょう。
2.同じ話者、同じ素材だけを延々やる
これもよくある失敗です。例えば英検のナレーターだけで速聴訓練を繰り返しても、脳はその人の声・発音・録音環境にだけ最適化されます。別の人の会話を聞いた瞬間に「え、全然聞き取れない!」とショックを受けることになるでしょう。もちろん、速い音声を理解する訓練にはなりますし、効果がゼロとは言えませんが積極的にリスニングを伸ばしたいなら必ず、いろいろなリスニング素材に変えながら訓練する方が効果が高いです。
言語学研究でも、時間圧縮音声の学習は「条件に特異的」とされています。簡単な言い方をすると、同じ音声だけでは英語リスニング全体的な能力を伸ばしにくいということです。
3.字幕やスクリプトを使わない
「字幕なんて邪道。英語は耳だけで勝負!」→この姿勢も危険です。
脳のワーキングメモリは有限です。特に非ネイティブにとっては、音声だけで高速処理を回すのは過酷な作業で、あっという間に脳疲労を起こして無意味な聞き流しモードに移行します。字幕やスクリプトは「補助輪」ではなく「速聴リスニングに準備体操」です。事前にリスニングする内容の地図を頭に入れておくことで、速聴理解度が高まり効果もついてきます。
ここまで聞いて「なるほど、やってみよう」と思った方へ。最初にハッキリと言っておきます。ぶっちゃけ半端なくしんどいです。最初は絶望的に聞こえません。でも、それでOKです。人間の脳の適応能力が半端じゃないので、ぼんやりと聞き流して「今夜の晩御飯は何を作ろうか?」ってなるより、全力集中せざるを得ない速聴トレーニングの方が良い負荷を作って鍛えることが出来ます。
この訓練を1週間続ければ、1.25倍速が「ナチュラル速度」に感じ始めるでしょう。そこまで到達すれば成功です。英検やTOEICのリスニング問題を余裕を持って取り組めます。もちろん、速聴リスニングをしなくても英語力を伸ばすことは可能ですが、どうしてもリスニングの伸び悩みの壁を突破できず、多少きつくてもしっかり伸ばせるトレーニングを求める人は検討する価値は高いと思います。
参考出典(レビュー・代表研究の例)
時間圧縮音声・知覚学習(基盤)
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Adank, P., & Janse, E. (2009). Perceptual learning of time-compressed speech. Journal of the Acoustical Society of America.
Janse, E. (2004/2008). Perception of fast speech: Comparing natural fast speech and time-compressed speech, age differences in adaptation. JASA 他関連誌.
転移・話者多様化(一般化の設計)
Bradlow, A. R., & Bent, T. (2008). Perceptual adaptation to non-native speech. Cognition.
Adank, P., et al. (2009以降). Generalization across talkers in time-compressed speech learning. JASA(関連報告の一例)
神経基盤・エントレインメント(速さへの適応機構)
Giraud, A.-L., & Poeppel, D. (2012). Cortical oscillations and speech processing. Nature Neuroscience.
Ding, N., & Simon, J. Z. (2014). Cortical entrainment to continuous speech: Functional roles and interpretations. Frontiers in Human Neuroscience.
Ghitza, O. (2012). On the role of theta-driven syllabic parsing in speech perception. Frontiers in Psychology.
二重チャネル提示・認知負荷(字幕/スクリプト併用の理論)
Mayer, R. E. (2009). Multimedia Learning (2nd ed.). Cambridge University Press.
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Sweller, J. (1998). Cognitive Load Theory. Educational Psychology Review.
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