ラジオ英会話で有名なあのNHKから「大人の学びなおし英会話プログラム」が出ていることをご存知でしょうか?
NHKラジオ英会話ではなく、NHK出版から年4回テキストで発売されているその名も「高田智子の大人の学びなおし英会話」です。まさしくこの動画チャンネル視聴者の大半を占める「中高年からの英語やり直し組」の心臓にド真ん中ストレート剛速球をかます感じの番組です。
ここまで話を聞いた方の中には「いやあ、黒坂さん。中学英語でわかるテキストとか番組って、公園のハト以上にもうそこらじゅうにありますやん」と感じるのも無理はありません。ですが、そこはNHKの番組、プログラムの質も非常に高く、それでいて年間でたったの5000円を下回る超リーズナブルな価格でお勉強ができます。本プログラムの講師を務めるのはNHK基礎英語の元講師・高田智子先生ですから、実質NHKラジオ英会話番組みたいなものです。
具体的にこの番組の特徴ってどんな感じ?誰におすすめできる?また、どうやったら英会話力アップに活用できるという勉強法に加えて、中学英語を勉強し直すのと、大人からの学び直しの勉強の違いがよくわからないけどという人の疑問を解消し、役に立つ内容になっていますのでぜひ最後までご視聴ください。
目次
1章 高田智子の大人の学び直し英会話の特徴
さて、まず1章では高田智子の大人の学び直し英会話の特徴について解説をしましょう。結論、3つあります。
1.実践的な英語を身につける
大人の学び直し英会話の特徴1つ目は、実践的な英語を身につけられる、です。

画像引用元:https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062133912024.html
今画面に出しているのは2024年12月に発売された冬号のサンプルページですが、シチュエーションがアメリカ人の妻と日本人の夫、それに妻の両親がニューヨーク市内を観光する、というものです。そして会話の内容も落ち着いた大人向けになっていていかにもよくありそうなんですよ。それから英単語もたとえばniceの代わりに fancy すてきなという単語や、amazingの代わりにbreathtaking息を呑むような、といった大人な表現が多用されています。火炎放射器持ったモヒカン男が好みそうな口汚いスラングとかは一切ありません。
この他にも相手との距離感に応じた英語表現が意識的に取り入れられています。よく、英会話には敬語がない、という意見がありますが実際にはまったくの間違いで相手との立場の違いや距離感で表現や使用する単語は全然違ってきます。
今の話を理解するための実例をお見せしましょう。たとえばディナーにお誘いをする時は、仲のいい友達のようなカジュアルな関係、同じ立場で上下関係がない同僚などのニュートラル、そして上司や取引先など日本語では敬語が必要な相手の時にはフォーマルな表現が重要になります。
【カジュアル】
Let’s go there for dinner.
Do you want to go there for dinner?
How about going there for dinner?
Why don’t we go there for dinner?
カジュアルな聞き方はこのようなフレーズが多くなります。
【ニュートラル】
Shall we go there for dinner?
Would you like to go there for dinner?
一方でニュートラルではshallやwouldを使って疑問形で誘うのと丁寧な言い方になります。
【フォーマル】
I was wondering if you would like to go there for dinner.
さらにフォーマルではI was wondering if ~する事は可能でしょうか?という婉曲表現が好まれます。
これが中学英語のテキストや、日常英会話テキストになるとカジュアル表現がメインになりますよね? その点、この大人の学び直し英会話について言えば、何がフランクな言い回しで、どんな表現がフォーマルで、それぞれどう使い分けるか?といったことまで学ぶことができます。
2.難しすぎない
大人の学び直し英会話の特徴2つ目は、難しすぎない、です。
大人の学び直し英会話に興味がある人は、現時点の英語力は知識ゼロの初心者ではないものの、まだまだ上級者というわけではないので高度な知的会話が例文に出ると難しくてお手上げ、ということになりかねません。プロフェッショナル向けのビジネス英会話、というと有名なのが杉田敏先生の現代ビジネス英語という番組ですね。過去動画で紹介したことがありましたが、こちらは最先端の時事ニュースや世界の諸問題を題材にした内容となっていて、英語力+時事ニュースを学ぶことができます。が、いかんせん、こちらは難易度がかなり高いです。大人の学び直しレベルで始めると真冬のプールに飛び込むのと同じショックで心臓麻痺するでしょう。
【2024年4月最新】独学でペラペラビジネス英会話!杉田敏さんの「NHKラジオ英会話」番組の効率的な最強の勉強法・完全解説【テキスト/レベル/英検1級/TOEIC900点】
また、もう一つNHKラジオビジネス英会話がある。こちらはざっくり英検準1級合格、TOEIC800点以上のホルダー向けの内容となっていて、ビジネス英会話に加えてプレゼンや英文メール、インタビューなど様々なビジネスシーンに対応したものとなっています。杉田敏先生の番組よりは優しいけど、それでもかなり難易度は高めとなっています。
【2025年4月最新/初心者向け】独学で英語ペラペラ!「NHKラジオ英会話」効率的な最強の勉強法・完全解説【テキスト/レベル/番組表】
一方でこの大人の学び直し英会話についてはこの2番組よりさらにやさしめに作られています。「今から中学生、高校生向けの英会話は実用性の面でどうかな」と悩んでいる人にとってはベストなチョイスになると思います。さらに平日毎日する前提のNHKラジオ英会話ではペースがきつい、という人にも独学マイペースで続けやすいメリットもありますね。
3.「わかる→できる」に変えるレッスン
大人の学び直し英会話の特徴3つ目は、「わかる→できる」に変えるレッスン、です。
この大人の学び直し英会話の番組は知識として知っているけど、英会話としてアウトプットができないとお悩みの学習者を想定して作られています。より具体的にいうと「学生時代に英語の勉強は最低限やったので、英文法はわかるし英語は読める。だけど、いざ英会話となると頭の中に英単語だけ浮かんで言葉が一欠片も出てこない」こうした壁にぶつかっている学習者向けです。
すでに特徴1でお話した通り、本書にはストーリー形式で練習して身につけたら即実践できそうなフレーズやシチュエーションを想定して作られています。実際の英会話で使える形にするために、番組の登場人物になったつもりで演じるように練習しましょうといっています。
2章 大人の学び直し英会話におすすめしたい人は?
はい、それではここからは第2章 大人の学び直し英会話におすすめしたい人は?について解説をしましょう。結論から先にいうと「すでに一通り英語の基礎を終えた学習者向け。ざっくり英検準2級から2級合格、TOEIC500-600点前後くらい」ということです。なぜそう思ったのかについて根拠をお話しましょう。
1.中学英語と大人の学び直しとの違い
大人の学び直し英会話におすすめしたい人を理解する上で、まずは中学英語と大人の学び直しとの違いを知っておきましょう。
中学英語は「英語の基礎を学び、受験に備える」ことが目的です。勉強は英単語、英熟語の暗記と英文法の理解に比重が置かれ、まずはリーディングとリスニングができるように訓練することになります。一方でこの動画で取り上げている大人の学び直し英会話は「すでに勉強した知識を英会話として出すレベルに引き上げること」が目的です。
つまり中学英語では、文法を順番に学習しながら積み上げていくことに対して、大人の学び直しでは、「使いこなせていない知識を活性化する」ことを重視しています。そのため、大人の学び直し英会話では文法の順番にこだわらず、実際の会話の場面に応じて必要なフレーズを学びます。
具体例で言えば、中学、高校の英語の勉強では「現在形 → 現在進行形 → 過去形」という順番で学習します。一方でこの番組では「自己紹介」「道案内」「買い物」など、シチュエーションごとに必要な表現を使いこなせるようにする想定です。
以上の話から察しの言い方はわかったと思いますが、本講座はすでに中学、高校英語を一通りできる状態の学習者向けということです。英語学習の目的が「昔、学生時代に学んで知識として蓄えた英文法や英単語をできる形に生き返らせ、外国人とのスムーズな英会話をしたい」という目的を持っている人はこの講座は一つの選択肢になるとおもいます。しかし、単語も熟語もほとんどわかりません、英文法もさっぱりわかりませんという人向けではないです。あくまでわかる→できるに変えるためのものなので、わかる状態がない知識ゼロの初心者向けではないです。
2.英会話ができるようになりたい人向け
英語4技能ができるようになりたい人、英会話ができるようになりたい人、英語で情報収集ができるようになりたい人、就職や転職で英語で仕事ができるようになりたい人、今言った目的別で、どの英語スキルをどの優先順位でどのレベルまで伸ばすか?が全く違ってきます。
本講座は「英会話ができるようになりたい人」向けのものです。逆に言えば、他のスキルを伸ばしたい人向けではありません。英検やTOEIC対策をしたいなら、別のテキストを使って違ったメソッドでやるべきですし、英語4技能を伸ばす場合もまた違った勉強法が必要ですね。さらに英会話ができるように、という話ではありますが想定されるのはあくまで外国人と挨拶、観光、など普段の日常生活で想定される範囲なので、プレゼンやディスカッションなどゴリゴリのビジネス英会話に特化した訓練ができるというわけでもないです。
そのため、ご自身の英語学習の目的をしっかりと見直して、ドンピシャで必要性を感じた人が手に取ると良さそうです。
3章 高田智子の大人の学び直し英会話の効果的な独学勉強法
さてこの章では、NHKの大人の学び直し英会話を使った最強の勉強法について解説をする。まずはテキストの構成を見て確認しておこう。画面にある通り、「見開きで英会話、日本語訳。次ページで解説や英会話練習」という構成になっている。


画像引用元:https://www.nhk-book.co.jp/detail/000062133912024.html
では具体的な独学勉強法について、6つのステップで解説していこう。NHKラジオ英会話の訓練とかぶる部分もあるけど、大人の学び直し英会話ならではのオリジナルの要素もあるからしっかり見てくれ。「ええっ?黒坂さん。講師が番組の中でやり方を詳しくリードしてくれるんじゃないですか?」いやいや、違うんだ。漫然と受け身で番組の進行に乗っかってやっても伸びない。今から紹介するやり方で必ずやってくれ。理由はしっかり負荷をかけながらやらないと伸びないから。
1.テキストを開かず、英語音声を何度も聞く
まずは完全に自分の耳だけを頼りに、英会話を聞き取ってくれ。分からないからといってすぐに諦めてテキストを見てはいけない。「ダメだ。もうこれ以上やっても、まったく聞き取れる気がしない…」と限界を感じるまで聞き取りをしよう。同じ英会話のやり取りを10回、いや20回くらいは聞くことになるだろう。ラジオ英会話は100%耳だけが頼りで、全神経を集中させてリスニングをすることになる。漫然と5時間ヒヤリングをするより、15分本気でリスニングする方が絶対に伸びる。本来、リスニングの勉強というのはこのくらい負荷をかけてもいいと思えるくらいだ。
テキストもみない、映像にも頼らない。ひたすら耳だけで英語の聞き取りに集中する。まずはこれが第1ステップだ。
2.耳から聞こえてきた英会話をシャドウイングする
何回もリスニングを繰り返したらすぐに答え(英文スクリプト)を見たくなるところだよな。だけど、グッと堪えてその次はシャドウイングをやってみてくれ。リスニングだけやっていると、だんだん集中力が途切れてくる。だけど、ここでシャドウイングを入れると、ボンヤリ聞き流しできないのでさらに負荷をかけられる。聞いたことがない英単語も、耳から聞こえたそのままの通りに発音をするようにしてくれ。「もうこれ以上聞いても、理解度はアップしない」って限界まで自分の口でシャドウイングすることで、英語を声に出すことに挑戦してみよう。その際、1回、2回だけじゃダメだ。スムーズに会話についていけるまで練習するんだ。ここまで追い込めば、上出来だ。次へ行こう。
3.限界まで聞いたら英語スクリプトをチェック、聞き取れなかった部分をチェック
シャドウイングが終わったら、ここでようやく英語スクリプトを見て答え合わせをしてくれ。あなたの耳が聞き取った英文をチェックするんだ。おそらく、愕然とするほど聞き取れていないことが判明するはず。
・aとtheの聞き取りミス
・ofと言っているのに聞き落とし
・whereとwhenどちらを言っているか分からない
こういった聞き落としや、聞き間違いがバンバン明らかになるだろう。そこを間違った箇所をメモしておくんだ。この作業は何の意味があるのか?それは自分が苦手で聞き取りづらい英単語の音を把握することができる。メモをしておくことで聞き取りづらい音は毎回聞き落としたり、聞き間違いをしていることに気づける。今後は自分の弱点の音を意識すれば、最初は聞き取れなかった部分も徐々に聞き取れるようになっていく。多くの英語学習者は漫然とリスニングをしているだけなので、自分の弱点の音を正確に把握できていない。弱点を明確にして意識してリスニングやシャドウイングをすることで、確実にあなたの英会話力はアップする。
「ええっ!?会話の練習をするつもりなのに、なんかリスニングばっかりしてない??」と思うかもしれない。だけどそれは違う。英会話というのは一方通行ではなく、あなたはスピーキングをして、相手のリスニングを聞き取るキャッチボールなんだ。あなたは練習をしてスピーキングはうまくなったとする。でも相手の話す内容を聞き取れなければ、その時点で英会話はgame overになる。それに正確に聞き取れるリスニング力がつけば、今度はそれをスピーキングすることで完璧な会話になるんだ。つまり、リスニング力をアップさせれば、スピーキング力もアップする。じゃ、次へいこう。
4.日本語訳を確認して内容を理解
そしてステップ3が終わったら、ステップ4で日本語の答え合わせをしてくれ。ここではじめて「なるほどこういうやり取りだったのか!」と正しく英会話の内容を把握できる。「英会話を聞く→分からない→すぐ答え見る」あなたはこれまでこういうやり方で英会話の勉強をしていたと思うけど、こんな勉強法だと、あまりに負荷が小さすぎる。あなたは自分が聞き取りにくい苦手な音を把握しているだろうか?分からない英単語を聞き流してないだろうか?もしもギクリとしたら今のあなたの勉強法は間違っているので必ず改善してくれ。今回紹介したこの勉強法で取り組めば、あなたはこれまで経験したことがない強さの負荷がかかることになるはずだ。そして負荷をかけた後にちゃんと答え合わせをするから、内容を理解した上で先に進める。負荷がかかるから、全神経を集中させて英会話練習をすることになり、結果としてあなたは英会話力アップになるんだ。大丈夫、これで間違いなく伸びていくことになる。
5.テキストの英文を見ながらスムーズに言えるまでシャドウイング
答え合わせが終わったら、今度はテキストの英文を見ながらでいいのでシャドウイングをしていこう。こうすることで、これまであなたが間違って理解していた知識を、正しく上書き修正していくんだ。正しいシャドウイングをし直すことで、リスニングの聞こえ方も違ってくるし、音の捉え方を修正できる。さらに、英会話を集中してシャドウイングすることになるから、脳内に奥底まで英会話フレーズをまるごとブチ込むことで、実際のスピーキングでそれをそのまま取り出すだけでいいんだ。
6.アウトプットで英語フレーズを使う
そして最後に日々、勉強をする中で「これは使えそう」というフレーズを手元にメモをしてほしいんだ。たとえば実際に過去のテキストで出てきた表現に
I have ever seen.
(私が今までに見た)
といったフレーズがある。メモをして何度も繰り返してスピーキング練習をして、何も見ないでとっさに言える状態を作っておくんだ。そうしたら英語を使う職場で働いている人は同僚やプレゼン、会議で使ったり、オンライン英会話レッスンに参加する時に積極的に使ってみるんだ。

この図はラーニングピラミッドといって何をした時に一番身につくかというのを示すんだけど、アウトプットする、他人に教えることが一番知識の定着化すると言われてる。現代ビジネス英語で学んだ内容を理解して終わりにするともったいないし、どうしても時間の経過とともに記憶が薄れてくる。だから無理やり使う。
相手:That movie was amazing!(あの映画、すごかったね!)
あなた:Yeah, it was the best movies I have ever seen.(うん、今まで見た映画の中で最高だったよ)
こんな感じで色んな人との会話でメモしておいたフレーズを毎日1回は使うようにする。そうすれば、ドンドン慣れてきてその内いちいち考えなくてもフレーズが脊髄反射的に出てくるようになる。そうなれば真のペラペラ英会話の完成ということになる。
この6ステップを番組の度にやれば、ドンドンリスニング力とスピーキング力がアップしていく。正直、かなり負荷が高い勉強法だけど、ダラダラ漫然とオンライン英会話を何年もやったり、語学留学に何年も行くのと比べて圧倒的に力がつくのは間違いないと力強く断言しておく。NHKラジオ英会話の番組を上手に使って、独学でプロの通訳者・翻訳家になった人や英検1級合格、TOEIC900点オーバーを実現した人は世の中にたくさんいる。
自分も20代の時にNHKラジオ英会話を使って熱心に英会話の独学をやったけど、20年の時を経てこうしたYouTubeでその番組の魅力を紹介している。この20年の間に色んな番組、色んな英会話素材が世の中に登場したけど、日本語の和書でこれだけ質が高くそれでいて知的で即使える知識をたくさん提供してくれるものはNHKラジオの番組を除いて自分が知る限り他にはないので、英語力を身に着けた人はぜひとも日常生活をする上で英語で知的活動を楽しむツールに活用してもらえたらと思う。心のそこから自信を持っておすすめしたい素晴らしい教材で間違いない。ほなまた。
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